一番最初にお酒を飲んだのは


地球上にお酒が出現したのが果たしていつ頃であったか定かではありませんが、お酒は人類誕生のはるか以前に自然現象のひとつとして出来上がったものと言われています。人間が飲むという行為を意識して造られたものではなく、実った果実が自然に落下して、果実に豊富に含まれているブドウ糖や果糖に、野生の微生物であるアルコール発酵を引き起こす酵母が入り込み、アルコールが造られたのです。自然現象が造り出したお酒を最初に飲んだのは、どうやら人間ではなく、空を飛ぶ鳥たちや地を走る動物たちだったようです。熟した果実は、10%前後のアルコール発酵可能な糖分を持っており、糖量のおよそ半分がアルコールに変わりますので、10%の糖分を持つ果実では、約5%のアルコールが出来上がることになります。(りんごが約10%、ぶどうや柿が約13〜15%、みかんが約10%)
アフリカの自然動物公園からの報告によると、野生の動物たちが食べ残した果実や熟しきって落ちた果実が、数日もすると発酵して、アルコールの甘い香りを振りまき、その香りに吸い寄せられるように集まった動物たちがそれを食べ、酔ってフラつき、実にユーモラスな行動をしたそうです。ある象たちはすっかり酔ってしまい、千鳥足でフラついたり、ぶつかったりとまるで人間の酔っ払いのようになったようですが、翌日には二日酔いの人のようにすっかり元気がなく、うなだれていたそうです。人間が地球上に出現するずっと以前からこのような光景があったと考えると、なんとも楽しいお話しではありませんか?

                                                       参考文献 小泉武夫著『酒の話』



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